卒後前期教育

昭和大学医学部卒後臨床研修センターに所属する研修医を対象に行なわれている、精神科研修プログラムについて説明します。
精神科研修プログラムは臨床研修2年次に行なわれています。
ここでの研修は、主要な精神神経科疾患の医学的知識を習得し、他科との連携における精神神経科の位置づけを理解することを目的としています。
また、患者は常に生物医学的・心理社会的な存在であることを理解し、その治療にあたってはこれらの包括的アプローチが重要であることを体験的に学習します。

コアプログラム

研修施設

昭和大学附属烏山病院横浜市北部病院の中から研修施設を選択します。

研修期間

原則として研修病院、プログラムに準じます。

指導責任者

  • 昭和大学病院附属烏山病院 岩波 明 教授、高塩 理 講師
  • 横浜市北部病院 工藤 行夫 教授、吉益 春夫 准教授

研修内容

外来

指導医の指導下で外来診療を行い、精神科診断法・治療法を研修する。

病棟

指導医の監督下で、入院患者の担当医としての自覚を持って研修に当たる。また指導医の指示により、適時当直を行い、緊急時、急変時の対応も経験する。

カンファレンスなど

各種カンファレンス、抄読会、研究会、回診などに参加する。

研修項目【精神科診療法】

一般目標(GIO)

受け持ち症例に関する主要な所見を正確に把握できる。

行動目標(SBOS)

  1. 患者、家族との適切なコミュニケーションの能力を含む精神医学的面接技法を習得する。
  2. 精神症状のみならず神経学的診察を含む診療技法を習得する。
  3. 病歴聴取の技術を習得する。
  4. 主要な精神疾患の症状を聞き出すための面接法を習得する。
  5. 主要な精神疾患の診断基準を把握する。
  6. 精神神経科救急の診察法を習得する。

研修項目【精神科特殊検査法】

一般目標(GIO)

検査法を習得し、結果を解釈できる。

行動目標(SBOS)

  1. 理学的・生理学的検査法
  2. 中枢神経画像診断(CT・MRI・SPECTなど)
  3. 脳波検査
  4. 心理検査
  5. 評価尺度(質問紙法)を用いた検査法
  6. 神経内分泌検査
  7. 認知機能検査(神経心理学的)検査

研修項目【精神科治療法】

一般目標(GIO)

適応を決定し、実施できる。

行動目標(SBOS)

  1. 薬物療法
  2. 精神療法、家族心理療法
  3. 心身医学的治療法
  4. 認知・行動療法・音楽療法
  5. 社会生活技能訓練(SST)、精神神経科リハビリテーション
  6. 電気れいれん療法(ECT)、高照度光療法
  7. リエゾン・コンサルテーション(他科との連携)
  8. 精神神経科救急治療法

研修項目【患者・家族との対応】

一般目標(GIO)

良好な人間関係の下で問題解決できる。

行動目標(SBOS)

  1. 適切なコミュニケーションがとれる。(患者及び家族への接し方を含む)
  2. 患者、家族のニーズを把握できる。
  3. 日常生活の指導(服薬遵守、ストレスケア、栄養と運動、環境、住宅医療を含む)ができる。
  4. 心理的側面の把握と指導・教育ができる。
  5. インフォームド・コンセント(解り易い言葉で病態、治療方針、予後が説明できる)
  6. プライバシーの保護に配慮できる。

研修項目【精神科医療の社会的側面】

一般目標(GIO)

精神科医療の社会的側面に対応できる。

行動目標(SBOS)

  1. 精神保健福祉法を中心とした保健医療法規、制度
  2. 医療保険、公費負担医療
  3. 社会福祉制度
  4. 住宅医療、社会復帰
  5. 地域保健・健康増進
  6. 医の倫理・生命の倫理
  7. 医療事故
  8. 麻薬の取り扱い

研修項目【精神科チーム医療】

一般目標(GIO)

様々な医療スタッフと協調・協力し、的確に情報交換して問題に対処できる。

行動目標(SBOS)

  1. 他科、他施設へ紹介・転送する。
  2. 検査、治療、リハビリテーション、看護、介護、ソーシャルワーカーなど幅広いスタッフについてチーム医療を理解し参加できる。
  3. 精神科訪問看護を含めた在宅医療チームを理解し参加できる。

経験する目標症例

1 気分障害 大うつ病、双極性障害
2 統合失調症 妄想型、解体型、緊張型
3 不安障害 パニック障害、社会恐怖、強迫性障害、全般性不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)
4 身体表現性障害 心気症、転換性障害、疼痛性障害
5 解離性障害 解離性障害
6 摂食障害 神経性無食欲症、神経性大食症
7 認知症性疾患、器質性精神障害、症状精神病 アルツハイマー型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、ピック病、その他の器質性精神病、その他の症状精神病
8 せん妄 一般身体疾患によるせん妄
9 アルコール関連障害 アルコール依存、アルコール離脱せん妄、アルコール精神病
10 物質関連障害 医薬品による精神障害
11 人格障害 境界性人格障害、他の人格障害
12 睡眠障害
原発性不眠症、概日リズム睡眠障害

各病院の研修の特徴

昭和大学附属烏山病院 精神神経科

指導医

  • 研修科の長・・・岩波 明 教授
  • 臨床研修責任者・・・高塩 理 講師
  • 指導数・・・12名

受け入れ人数

1週間あたりの受け入れ人数を5名とする。

診療・研修の特徴

  1. 医療の役割は、病態の解明とその治療にとどまらず、患者の最終的な生活の質を改善するものでなければならない。
    人間は常に生物医学的・心理社会的な存在であり、疾病の治療にあたってはこれらの包括的統合的治療アプローチが重要である。
    以上について実践的に理解を深めることを当院における目標とする。
    そのため、将来精神科医師を目指さない臨床研修医にとっても有益な研修機会としての特徴を有する。
  2. 当院は、東京都指定医病院としての機能を有し、地域において中核的な役割を担っている大学病院附属の精神科専門病院(456床)である。
  3. 症例も豊富で、統合失調症をはじめとする精神疾患全般、老人性認知症疾患、アルコールおよびその関連疾患の治療やリハビリテーションに実績をあげている。
    一般精神科外来の他に、老人性認知症性疾患、アルコール・薬物依存性疾患の専門外来を有する。
  4. 薬物精神療法に加え、生活技能訓練をはじめとする認知行動療法、心理教育や家族教育、認知行動療法的家族療法、地域保険所と連携したケースマネージメントの導入など新たな方法論の研修が可能である。
  5. ソーシャルワーカー、臨床心理士、看護士、作業療法士、薬剤師などの他の複数の専門職と医療チームを作り、包括的治療アプローチをリードする医師として実践的臨床研修に参加することが可能である。

研修に関するスケジュール

指導医の指導下で臨時外来・病棟診療に参加し、精神科診断法・治療法を研修する。
病棟研修は、精神科急性期治療病棟、高齢者認知症疾患治療病棟、精神・身体合併症病棟などで行なう。
指導医の監督下で、入院患者の担当医としての自覚を持って研修に当たる。
また、指導医の指示により、適時当直を行ない、緊急時、急返時の対応も経験する。
また、病棟カンファレンスや症例検討会などの各種カンファレンス、抄読会、研究会、回診などに参加する。

昭和大学横浜市北部病院 精神神経科

指導医

  • 研修科の長・・・工藤 行雄 教授
  • 臨床研修責任者・・・吉益 春夫 准教授
  • 指導数・・・8名

受け入れ人数

1週間あたりの受け入れ人数を2名とする。

診療・研修の特徴

  1. 精神神経科では、選択プログラム(1ヶ月か2ヶ月)でも、精神神経科以外を志望する研修医を主にターゲットとしている。
    将来、精神科医のいない病院な勤務したときに、精神医学的な判断と、可能であれば治療も行いたいと考える研修医に最適なプログラムである。
  2. コンサルテーション・リエゾン(通称はリエゾン)では、精神的な問題について、依頼するほうから依頼されるほうに回り、精神神経科の視点に立った体験ができる。
    選択プログラムで精神神経科を選択した場合には、リエゾン業務の分担を増すことによって、重点的に研修することも可能である。
  3. 必修プログラムでは、毎週水曜日にクルズスが行なわれている。
    数多い向精神薬の中から、精神科医のいない施設で働く医師が使いこなすべき薬を厳選した。選ばれた薬について、すぐに役に立つ具体的な説明がなされるはずである。
    選択プログラムでは追加のクルズスは予定されていない。
    選択プログラムの期間は必修プログラムのクルズスで学んだ内容を実践する時間となる。
  4. 入院は、50床の一般精神病棟(隔離室4床を含む28床の閉鎖病棟、22床の開放病棟)、50床の認知症治療病棟を有し、広い範囲の精神疾患を経験できる。
    入院が必要な統合失調症、躁うつ病(うつ病)、認知症などの患者が回復するまでには一般に2~3ヶ月を要する。
    選択科目で精神神経科を選んだ研修医は、選んだ期間(1ヶ月か2ヶ月)に応じて患者が回復するまでの経過を、入院から退院までの体験可能となる。
  5. 外来の初診は完全予約制である。初診担当の精神保健指定医が60分かけて最善を尽くすはずである。
    研修医は、時間に追われることなく、じっくりと研修ができる。
    選択科目で精神神経科を選んだ研修医は、(希望すれば)指導医のもとで、再診患者を診察する機会が与えられる。
  6. 当直は二年次の選択科であっても、上級医が一緒に泊まるので、1人で判断に困ることはない。
    安心して研修ができるはずである。

研修に関するスケジュール

曜日 午前 午後 夕方以降
月曜日 外来予診 診察 病棟  
火曜日 リエゾン予診 リエゾン診察  
水曜日 病棟 新患カンファレンス 医局会、研究会
木曜日 病棟 病棟  
金曜日 リエゾン予診 リエゾン診察  
土曜日 外来予診 診察    

※業務は毎月の予診分担表で割り振られます